―以下小倉志郎さんの寄稿文の引用―

 自民党の幹部議員の何人かが「国を守るために命を捧げる気力のある若者が欲しい」と述べたことがある。

ストレートに解釈すれば「命よりも国の方が大切だ」ということだ。

これでは「御家存続のために家臣個人が命を捨てる」ことが美談とされた封建時代の価値観と変わりがない。

「家」が「国」に代わっただけだ。

1945年に日本が戦争に負け、1947年に新憲法が施行されて民主主義国家に生まれ変わってからは、「個人の命より大切なものは無い」という新しい価値観が導入されたものと私は思っている。

この新しい価値観からすれば、「自衛のため」と称して命を奪い合う戦争を肯定する考え方は大矛盾だ。

守ろうとしているものを取り違えている。

先日観たNHK特集番組「自衛隊変貌の先」の中に自衛隊員の家族間の会話があったが、隊員である父親は自らの「国を守る」ために武器を持って戦うことが有意義な仕事だと信じているのだが、家族たちにわかり易く説明できないもどかしさが表情に浮かんでいた。

戦争ができるための軍隊を持ちたい政府が「国を守る」ことの大切さを盛んに宣伝しているが、戦争では家族を守れないことを実感している自衛隊員がジレンマに陥っていることをこの「もどかしさ」が示している。

2024年7月1日 記

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