この問題意識と解決策の提示こそが本書出版の動機(契機)です

私は数年前に都内中心部の比較的活発に活動している「~~9条の会」の講演会に参加しました。質疑応答の時間に「9条の会はなぜ自衛隊廃止や安保条約廃棄を主張しないのか」と質問しましたが結局無視されました。

この事情について私が東大後輩の親しい憲法学識者にその理由を尋ねたところ以下のような回答をもらいました。少々長いですが重要な視点を示していますので一部要約して引用いたします。

―引用開始― “9条の会は、「9条を守る」ことを一致点として結集した会だが、肝心の9条の意味については合意がなく、自衛隊廃止や安保条約廃棄はそもそも合意の対象とはなっていない。

ところでなぜ9条の会が自衛隊廃止を一致点にできないかというと、自衛隊を支持する世論の広がりに加え、「護憲」の意味が2004年前後に根本的に変わってしまったからだ。2003年にイラク戦争が起こると、小泉内閣がイラク特措法を成立させ、同年末に自衛隊をイラクに派遣した。これに対して違憲訴訟を真っ先に提起したのが元自民党で防衛政務次官を務めたこともある箕輪登氏である。そして2004年2月から各地で自衛隊イラク派兵違憲訴訟が提起されたがその主張は、専守防衛の自衛隊は合憲だが、海外派兵は違憲という主張であった。「9条の会」が結成されたのも2004年の6月だったが、そこでは自衛隊違憲論ではなく海外で戦争する国づくりに反対するというのが一致点であった。つまり「9条の会」の立場は自衛隊イラク派兵違憲訴訟と同じであったのだ。そしてそのころから自衛隊違憲論や自衛隊廃止論は護憲運動の表面からは消えてしまった一見表面的には消えてしまったかに見える自衛隊廃止論だが実は隠れキリシタンのように、その支持者は潜在的には根強く伏在しているというのが私の見立てである。自衛隊を廃止しても日本の安全保障に危険がないどころか、むしろ安全性ははるかに高まることを説得的に示しさえすれば、賛同する人は実は非常に多いと確信している。

自衛隊廃止や安保廃棄を正面から提起している団体がないからこそ、ご著書を出版する意味があると私は思う。―以上引用終わりー

2021年8月20日 コロナ禍の一挙の拡大で平和運動もままならない中で 記

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