―以下元東芝原発技術者の小倉志郎さんの寄稿文の引用―
福島第一原発からの汚染水の海洋放出について、どうやら全漁連幹部も福島県漁連幹部も政府と妥協したようだ。
「関係者の理解なしに、いかなる処分も行わない」という文書による約束について、両漁連の幹部は口をそろえて「約束は果たされてはいないが、破られてはいない」と記者たちに語ったそうだ。
裏で何があったのかは知らないが、関係者の理解なしに汚染水の太平洋への放出が始まったのだから、「約束は破られた」というのが正確な事実だ。
現に幹部ではない漁業者たちは幹部たちの発言に納得をしていない。
幹部たちは「風評は数年経てば国民は忘れてしまうだろう。
その間、たっぷりと補償金をもらっておけば大した損をしないでまた元通りの漁業ができるだろう。」と考えているのだろう。
もし、問題が風評だけなら、それも一理ある。
しかし、ことはそんな生易しいことではない。
汚染水にはトリチウムはもちろんのこと、ALPS装置で取り切れない多種類の放射性物質が残っている。
しかも、30数年かけて放出する放射性物質の総量が東電にもわからないと言う。
放射線被ばくには「これ以下ならば安全」という「閾値」が無いことは放射線被ばくの影響に関する世界の最高権威であるICRPも認めている。
即ち、放出時にどれほど希釈しようと放出した放射性物質の量に応じた「実害」があるのだ。
太平洋に放出された放射性物質を回収する手段は無い。
つまり、実害を無くす手段も無い。
いくら時間が経とうと漁業環境が元に戻ることは永久に無い。
大至急、放出を中止しなければならない。
2023年9月7日 記
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