ピースアゴラ呼びかけ人、小倉志郎さんの寄稿文です。小倉さんは東芝で現役時代、放射性物質で汚染した原子炉建屋内の点検を長く経験されました。原発技術者の中でも設計段階から原発の現場を知っている技術者は小倉さんをおいて少ないでしょう。

―以下小倉さんの寄稿文引用―

 国会議員選挙が始まる頃は、著者に政治家の名を記した新刊本が並ぶ傾向がある。めったに本を買わない私も今回の衆議院選挙の始まる頃、散歩の途中、好奇心につられて横浜駅界隈で最大の書店を覗いてみた。政治関係のコーナーに行ってみたら案の定、総選挙を前にして名を売るだけが目的のような新刊本が並んでいた。それと共に、政治の主要なテーマである「国を守るにはどうすれば良いか」ということについて、「国防」「安全保障」「地政学」「自衛隊」などの文字がタイトルに入った本が沢山並んでいた。それらの著者や対談者として著名な政治家、評論家、学者たちの名前が踊っていた。もともと買う気はなかったが、これらの本の中で、日本のアキレス腱と私が考えている「原発」がどのように論じられているかを知りたかったので、片っ端から各本の目次を見て行った。その結果、驚くべきことに、原発に言及している本が1冊も見つからなかった。これは一体どうしたことか?この書店の政治関係コーナーの状態に「これは何かおかしい!」と感じざると得なかった。

 もともと原発の設計条件に「武力攻撃に耐えねばならない」などという要求は入っていない。経済性を最優先にしていて、武力攻撃に対しては弱点だらけなのが原発である。それなのに、なぜ「国防」に関する「権威者」たちはそのことに言及しないのだろうか?視野が広く、想像力豊かであろう「権威者」たちが知らないはずがない。言及しない理由を一応考えると次のような項目が思い浮かぶ。

  • 原発は武力攻撃に対して十分耐えられると考えている。(誤解、または、無知による)
  • 原発は武力攻撃の目標にならないと考えている。(同上)
  • 原発が武力攻撃に対して耐えられないことをわかっているが、これに言及することはタブーになっている。

 それぞれの「権威者」がどれに当てはまるか私にはわからない。しかし、いずれにしても、原発について言及しない「国防論」など非現実的なことは明らかだ。そんな「国防論」に基づいて日本の外交政策が進められて、自衛隊や米軍の軍事力が強力だからと武力衝突などを起こされたら、日本が亡びるのは確実だ。「権威者」の「国防論」を信じてはいけない。

 最後に、読者の中で原発を論じている「国防論」の本を知っている方がいたら、ぜひコメント欄を利用して一報くださるようお願いしたい。

2021年10月28日 かねてからの疑問を皆さんの叡智で解き明かしたい 小倉志郎 記

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