今回は元原発技術者の小倉志郎さんの寄稿です。

小倉さんほど原発のほんとうの怖さを知ったうえで私たちに隠すことなく警告を発してくれる専門技術者は日本に何人もいません。国会の諮問委員会に参考人として出席し議員の質問に事実をありのままに答弁された小倉さんならではの警告に耳を貸さずに軍拡に走る自公政権はまさに亡国政権です。今月末の総選挙で政権交代を実現させないと子々孫々に禍根を残すことになります。

―以下小倉さんの寄稿文―

 今、日本は戦争ができない国になっている。その理由は実に単純だ。理由は2つで、一つは法律的な理由、もう一つは物理的な理由である。

1.法律的な理由:日本国憲法第9条に「国際紛争を解決する手段としてはこれ(戦争)を永久に放棄する」と明記してある。これはいわゆる「15年戦争(1931~1945)」の間に、日本が中国をはじめとするアジア諸国に対して行った侵略戦争に対しての反省・謝罪、および、将来二度と戦争をしないという国際的な約束である。「自衛のためなら」などという理由で戦争をすることはできない。先の戦争も「日本の自衛のため」という名目で行われたのだから。

2.物理的な理由:日本の海岸線には50基以上の原発が並んでいる。各原発には運転することによって核燃料ウラニウムが分裂してできる高レベル放射性物質が大量に溜まっている。戦争になれば、相手国の社会活動を停止させるために発電所を攻撃するのは常識であり、しかも、原発の場合は発電が止まるばかりでなく、それまでに溜め込んだ高レベル放射性物質が環境に漏れ出す。放射能を含んだ大気の広がりに対して人々は緊急に逃げるしかない。逃げるしかないのは軍隊も同様である。どんな武器・兵器も放射能に対しては無力だ。3・11フクシマ原発事故の際、世界最強の米国海軍の原子力空母ロナルド・レーガンですら逃げるしかなかった。さらに、人々が逃げることができた後、放射能で汚染した環境は数百年はおろか数千年もその汚染は消えず、元のきれいな環境に戻ることは永久にない。つまり、戦争になれば日本は広い国土を失うことを避けることはできない。

 さらに、原発を武力攻撃から守る手段はない。なにしろ、原発はいたるところに弱点があり、それはほんの数人のゲリラが携帯できる小型の兵器で破壊することができるからである。この詳しい解説は拙文「原発を並べて自衛戦争はできない」(ブログ「地球座」<http://chikyuza.net/archives/8887>に全文掲載)に具体的に記してあるので、ぜひ読んでいただきたい。

日本は戦争ができない国であることがわかりさえすれば、「自衛隊も米軍も、日本にはいらない!」のは自明であろう。

2021年10月20日 どの党首も日本の安全保障に重大影響を持つ原発の危険にまったく触れないことに大きな疑義を持ちつつ 記 小倉志郎

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