戦後憲法の権威、故芦部信喜東大教授(1923~1999年)が23歳の時に書いた幻の原稿「新憲法とわれらの覚悟」が2021年6月に発見され、その全文が「世界」2022年5月号に掲載された。
論文が書かれたのは新憲法が施行された1946年11月3日直後の11月15日である。
私は幸運にも芦部教授(当時は40歳で教授なりたて)の憲法学の講義を受けた一人だ。
幻の論考の結論は
「日本人が、もし封建時代から継承された他力本願的な気持ちを清算できないならば、明治憲法に比し飛躍的な近代的性格を持つ新憲法を時の経過とともに空文に葬り去ってしまうことが、決してないとは言えない」である。
幻の論文を重要部分引用すると
「その最も生々しい教訓を第一次大戦後のドイツワイマール憲法に見ることができる」
「われわれはこの歴史の悲劇を対岸の火災視することはできない」
「国民の思想的動向が、右に左にただ時論の赴くままに浮動し何らの節操もない為政者を選出して異とも感じない考え方が依然として改められず、相変わらず被治者根性に支配されて主体的の意識を取り戻さぬ限り、新憲法の下に再び過去の変改が繰り返されることが決してないとは言えない」
「誠に平和日本の建設の成否は国民の資質にある。
これはひとり知性と道義の高揚のみならず、日本国民が「聖なるもの」の新たな発見なくしては遂に不可能であるであろう。(東大南原総長の演述)」
芦部教授の幻の論文の最後に引用された<平和日本の建設の成否は、国民が「聖なるもの」の新たな発見なくしては遂に不可能であるであろう>の「聖なるもの」こそ、私は非武装中立日本を世界に先駆けて実現することであると信じる。
2023年6月26日 記
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