学徒出陣された先輩故水野皖司さんが最初に読む本として私に推薦した「山中放浪」今日出海著―中公文庫、1978年12月発行の一節を紹介したい。
今日出海氏は小説家で僧侶でもあった今東光氏の実弟だ。
1939年明大教授、1944年12月末報道班員(41歳時)としてフィリピン・ルソン島に渡り、敗走する日本軍とともに5か月間山中を放浪後、台湾に奇跡の脱出をして生還した。
―以下本文から引用―
蝙蝠(こうもり)荘-1945年3月の記述
私は3月(みつき)前には東京の銀座を歩いていのだ。
B29の姿を見たくらいで、それが恐ろしい編隊をなして爆撃するものとは思ってもみなかった。
私の出発の前夜には、友人の小林秀雄や河上徹太郎が鴨を一羽ずつさげてきて渋谷の家で楽しく送別の宴を張ったのに、なんという変わり方だ。
私の身体は壕の泥にまみれ膿汁で悪臭を放っている。
傷口の膿みを振り払うと真っ赤な肉が見えている。
レイテ作戦が内地ではこれから大反撃に移ると言っているのに、マニラに来てみれば、既にレイテは敵の手中に陥って、段落が付いた後である。
報道はことごとく嘘で固めている。
こんなウソの報道で国民を欺いて戦争は継続できると思いますか。
私はしゃべっているうちに昂奮し、思わず参謀長に迫った。
「私も無理と欺瞞を認めます」参謀長もそれを肯定した。
-以上引用終わりー
これが戦争の実態だ。
国民にロシア、中国、北朝鮮、台湾有事と脅威を吹き込んでウソで固めた情報の嵐で国民を洗脳する今の岸田自公政権の政治状況とそっくりではないか。
岸田内閣の支持率が38%に落ちた(共同通信)と言うが3.8%でも高すぎる。
2023年7月20日 記
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