―以下元東芝原発技術者の小倉志郎さんの寄稿文の引用―
「風が吹けば」と言えば、後ろに「桶屋が儲かる」と付くと思うのは私のような後期高齢者だ。
私が小学生の頃には、同級生に桶屋の息子がいて、通学の行き返りにその店の前を通り、我が家の風呂桶も作ってもらった。
しかし、木製の桶を見る機会がほとんど無い今の若い人々が「桶屋」と聞いて、それが木材から風呂桶やおひつをつくる職業というイメージが湧かないだろう。
その代わり、今の若い人々には別のイメージを持ってもらえば良い。
それは「風が吹けば、汚染が広がる」である。
福島県では県民の居住エリアは除染作業により放射性物質(放射能)による線量率を低減させ、避難した県民が帰還することを奨励している。
年間被ばく線量が20ミリシーベルト以内になるエリアには帰還して良いと言うのだ。
職業人として年間被ばく量が最大限5ミリシーベルト以内になるように管理されながら、原発内で働いていた私から見れば、職業人でもない一般県民にとんでもない危険な基準が押し付けられている。
百歩譲って、それでも帰還したい県民がいるならやむを得ないとしても、「風が吹けば」福島県の約75%を占める山岳森林地帯は除染の対象外だから、そこに溜まっていた放射能が居住エリアに運ばれて、除染されたエリアは再汚染してしまう。
これが半永久的に続くのだから、環境が放射能汚染の無い元に戻り安心して子育てできるようになるという意味での復興はありえない。
2024年4月29日 記
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